北海道では雪解けを迎えると、道路や歩道の補修工事が始まります。
冬の間、除雪車が何度も通り、路面は凍結と融解を繰り返します。その影響で舗装にはひび割れや段差が生じ、春になると各地で補修が行われます。
しかし、北海道の道路網は広大です。生活道路まで短期間ですべてを補修することは難しく、住宅街や通学路、商店街には小さな段差や舗装の傷みが残ることも珍しくありません。
多くの人にとっては「歩きにくい道」で終わる話かもしれません。
しかし、高齢者や障害のある方にとっては、その数センチの段差が転倒や外出の断念につながることがあります。
住環境というと住宅改修や手すりを思い浮かべる方が多いでしょう。
けれど、本当に暮らしを支えているのは家の中だけではありません。
家を出てからスーパーまで。
病院まで。
バス停まで。
その移動環境も、住環境の一部なのです。
雪国だからこそ起こる「春の危険」
北海道では冬の転倒事故に注目が集まります。
確かに、凍結路面は大きな危険です。
一方で、雪がなくなったからといって安心できるわけではありません。
雪解け後には、
- 舗装の浮き
- アスファルトの欠け
- 小さな穴
- マンホール周辺の段差
- 歩道の傾き
などが生活道路に残ることがあります。
健康な人であれば無意識に避けられる場所でも、身体機能が低下している方にとっては、転倒のきっかけになることがあります。
同じ段差でも、影響は人によって全く違います
例えば片麻痺のある方では、麻痺側の足先が十分に上がらず、小さな段差でもつまずきやすくなることがあります。
シルバーカーは前輪が小さいため、舗装の割れ目や段差に車輪を取られることがあります。
車椅子も同様です。前輪(キャスター)は小さいため、わずかな凹凸でも急停止したり、身体へ衝撃が伝わったりすることがあります。
パーキンソン病ではすくみ足によって歩き出しが難しくなり、歩道の凹凸が動作をさらに複雑にすることがあります。
視覚機能が低下している方は、舗装の変化そのものに気付きにくいこともあります。
つまり、「歩道が傷んでいる」という一つの環境でも、身体の状態によって危険の現れ方は全く異なるのです。
転倒だけが問題ではありません
転倒はもちろん大きな問題です。
しかし、それ以上に見逃されやすいのが「外出しなくなること」です。
「あの道は歩きにくい。」
「転ぶのが怖い。」
「今日はやめておこう。」
この積み重ねによって、
買い物へ行く回数が減る。
散歩へ出なくなる。
地域との交流が減る。
身体を動かす機会が減る。
結果として身体機能や生活機能の低下につながることがあります。
住環境は、転倒だけではなく、その人の生活そのものに影響しているのです。
家だけ見ても、暮らしは見えてきません
住宅改修では、家の中を細かく評価します。
手すりの位置。
段差。
トイレ。
浴室。
玄関。
もちろん、それらは非常に重要です。
しかし、家の中だけ安全でも、家を出た瞬間から歩きにくい道が続くのであれば、その人の生活を十分に支えられているとは言えません。
毎日利用するスーパーまでの道。
病院までの歩道。
バス停までの距離。
雪解け後の舗装状態。
こうした生活圏全体を含めて考えることが、本来の住環境評価ではないでしょうか。
北海道の街には、北海道ならではの課題があります
歩道の舗装だけではありません。
近年では、
- 自転車利用ルールの変更による歩行者との関係
- 公共交通機関の減便
- バス停までの距離
- 本数の少ない路線バス
- タクシー料金の負担
- 車がなければ生活しにくい地域
など、移動そのものを取り巻く環境も大きく変化しています。
高齢者や障害のある方にとって、「移動できること」は「生活できること」とほぼ同じ意味を持ちます。
これらもまた、住環境として考えるべき課題なのです。
まとめ
私たちは住環境というと、家の中の手すりや段差に目を向けがちです。
しかし、実際の生活は玄関で終わりません。
家を出てから目的地までの街全体が、その人の暮らしを支えています。
雪解け後の歩道。
住宅街の舗装。
公共交通機関。
移動手段。
これらを別々の問題として見るのではなく、「生活を支える住環境」として考える視点が、これからますます重要になるのではないでしょうか。
チェックリスト
□ 自宅から最も利用するスーパーまで、安全に移動できる環境ですか。
□ 病院や薬局までの歩道に、転倒につながる段差や舗装の傷みはありませんか。
□ シルバーカーや車椅子、杖を使用する方が通行しにくい場所はありませんか。
□ 雪解け後の歩道環境を、冬だけではなく春の課題として考えたことがありますか。
□ 家の中だけではなく、生活圏全体を住環境として考えていますか。


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