良い家が、良い住まいとは限りません

リフォーム・改修

作業療法士が考える「暮らしやすさ」の正体

住宅展示場へ行くと、

「高性能住宅」

「高気密・高断熱」

「長期優良住宅」

という言葉をよく目にします。

どれも大切な性能です。

しかし私は作業療法士として、20年以上生活の現場を見てきて、一つ強く感じていることがあります。

良い家が、必ずしも良い住まいとは限らない。

住まいを評価するとき、本当に見るべきものは建物ではなく、その家で営まれる生活だからです。


日本は「長生きする国」から「暮らし続ける国」へ

日本人の平均寿命は世界でもトップクラスです。

一方で、健康寿命との差は男性で約9年、女性で約12年あるとされています。

つまり、多くの人が人生の最後の約10年前後を、何らかの支援を受けながら生活しています。

これから求められる住宅は、「長く住める家」ではなく、

生活を続けられる家

なのではないでしょうか。


家の性能と暮らしやすさは同じではない

住宅にはさまざまな性能があります。

  • 耐震性能
  • 断熱性能
  • 気密性能
  • 省エネ性能

これらは命を守るために非常に重要です。

しかし、

毎日の生活を支える要素は、それだけではありません。

例えば、

  • 朝、自分で起きられるか
  • トイレへ安全に行けるか
  • 台所で料理を続けられるか
  • 洗濯物を干せるか
  • 近所へ散歩に行けるか

こうした日常生活動作(ADL)や手段的日常生活動作(IADL)が維持できて初めて、「暮らしやすい住まい」と言えるのです。


作業療法士は「家」ではなく「生活」を見ています

住宅を訪問するとき、私は最初に手すりの位置を見るわけではありません。

まず見るのは、

その人が、その家でどのように暮らしているか。

例えば玄関。

建築では「段差」が注目されます。

しかし作業療法士は、

  • 靴は座って履けるか
  • 荷物を持ちながら出入りできるか
  • 冬のコートを着ても安全か

という生活そのものを見ています。

住環境とは、

建物の評価ではなく、

生活の評価なのです。


ICFは「環境」も健康の一部と考えている

WHO(世界保健機関)が示したICF(国際生活機能分類)は、人の健康を身体機能だけで考えません。

生活機能は、

  • 心身機能
  • 活動
  • 参加
  • 環境因子
  • 個人因子

が相互に影響すると考えています。

つまり、

住まいも健康を左右する重要な環境因子です。

住環境は、「暮らしやすさ」を支えるだけでなく、その人の社会参加や生活の質にも影響を与えます。


北海道だから見えてくる住環境の課題

北海道では、住宅性能が高くても安心とは限りません。

冬は寒さや積雪の影響で外出が減り、活動量が低下しやすくなります。

暖かい家で快適に過ごせても、

歩かない。

人と会わない。

買い物へ行かない。

そうした生活が続けば、身体機能や認知機能の低下につながる可能性があります。

家の性能だけでは、健康は守れません。

暮らし方まで考えてこそ、本当の住環境なのです。


良い住まいとは、その人らしく暮らせる住まい

私は、住まいを評価するとき、

「新しい家か」

「高性能か」

ではなく、

その人が、自分らしく暮らし続けられるか

を大切にしています。

住宅は人生の器です。

器だけが立派でも、中身である生活が失われてしまえば、本当に良い住まいとは言えません。


まとめ

良い家と、

良い住まいは違います。

住まいとは、

建築でも、

介護でも、

医療でもありません。

生活そのものです。

だから私は、

家を見る前に生活を見る。

性能を見る前に暮らしを見る。

そんな視点が、これからの超高齢社会には必要だと考えています。

福祉住環境とは、

建物を考える学問ではなく、

「人が地域で、その人らしく暮らし続けるための環境」を考える学問なのです。


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