なぜ今、「住宅」と「福祉」が一緒に語られるようになったのか
「日本には空き家が900万戸もあるのだから、住む家には困らない。」
そんな声を耳にすることがあります。
しかし、現実はそう単純ではありません。
家は余っています。
それでも、
安心して暮らし続けられる住まいを見つけられない人が増えています。
私は、この問題は住宅不足ではなく、
住まいと生活を別々に考えてきたことが原因だと思っています。
空き家は900万戸。それでも住めない人がいます
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」では、日本の空き家は約900万戸となり、過去最多を更新しました。
一方で、
- 高齢者
- 障害のある方
- 低所得世帯
では、
「家を借りたいのに借りられない」
という問題が続いています。
そのため国は、住宅セーフティネット制度の見直しなどを進め、
住宅政策と福祉政策を一体で考える方向へ舵を切りました。
制度の方向性としては、とても重要なことだと思います。
しかし、現場は制度どおりには進みません
ここで一つ考えてみてください。
空き家がある。
では、その家は本当に住めるのでしょうか。
築50年。
玄関には高い段差。
廊下は狭く、
浴室は寒い。
トイレも和式。
これを高齢者が安全に暮らせる住宅へ改修するには、
数百万円規模の費用がかかることも珍しくありません。
では、
85歳になってから、
あと何年住むか分からない家へ、
その投資は現実的なのでしょうか。
制度だけでは答えは出ません。
集合住宅なら解決するのでしょうか
では、
バリアフリーの集合住宅へ住み替えれば良いのでしょうか。
ここにも現実があります。
最近、地域包括支援センターの方からこんな話を聞きました。
「ペットを置いて入院できない高齢者がいる。」
犬や猫は家族です。
ペット不可の住宅では暮らせません。
だから入院もためらう。
これは決して珍しい話ではありません。
住まいを考えるとき、
建物だけではなく、
その人の暮らし全体を見る必要があります。
「生活圏」という視点が抜けています
仮に空き家が見つかったとしても、
スーパーまで車で20分。
病院まで30分。
バスは一日に数本。
冬は雪で外出も難しい。
これでは、
住めても、
暮らし続けることはできません。
住環境とは建物だけではありません。
交通、
買い物、
医療、
地域とのつながり、
除雪、
近所付き合い。
こうした生活圏まで含めて初めて、
「住める家」になります。
作業療法士が見るのは建物ではなく生活です
私は住宅を見るとき、
まず間取りを見ません。
その人が、
どこへ買い物へ行くのか。
どの病院へ通うのか。
誰が見守っているのか。
どこで転びそうなのか。
どうすれば今の暮らしを続けられるのか。
そこを見ています。
建物だけ整えても、
生活は成り立ちません。
だから私は、
住環境とは
「生活を支える環境」
だと考えています。
制度と現場の間には、大きな壁があります
制度は全国共通です。
しかし、
暮らしは地域によって全く違います。
都市部と地方。
豪雪地帯と温暖な地域。
公共交通が充実した街と、
車がなければ生活できない街。
同じ制度でも、
現場では課題が変わります。
だからこそ、
制度を知るだけでは十分ではありません。
現場を知り、
地域を知り、
その人の生活を知ることが必要です。
まとめ
日本は今、
住宅政策と福祉政策を一体で考える時代へ入っています。
その方向性は間違っていません。
しかし、
空き家があることと、
安心して暮らせることは違います。
家があることと、
生活できることも違います。
これから求められるのは、
建物を見る視点ではなく、
「人が地域で暮らし続けられるか」という視点です。
私は、その視点こそが福祉住環境であり、
これからの超高齢社会に最も必要な考え方だと思っています。
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福祉住環境研究所では、作業療法士・FP・宅地建物取引士という複数の専門資格と、就労継続支援B型事業所の運営経験を活かし、「住まい・介護・障害・お金」を横断した講演・研修を行っています。
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