高齢者住宅選びで失敗する理由

介護と住まい

高齢者住宅を探し始めるきっかけは人それぞれです。

一人暮らしが不安になった。

退院後の生活が難しくなった。

家族の介護負担が大きくなった。

しかし実際には、「住宅選びそのもの」で失敗するケースよりも、「住宅選びを始める時期」で失敗するケースを多く見てきました。

今回は高齢者住宅選びで失敗が起きる理由について考えてみます。

高齢者住宅の必要性は今後さらに高まる

日本の高齢化率は29.3%に達しています。さらに、一人暮らしの高齢者は今後も増加すると予測されています。内閣府の高齢社会白書では、65歳以上の一人暮らしは今後も増加し続ける見通しが示されています。

つまり、

「家族が近くにいて支えてくれる」

ことを前提に住まいを考えることが難しい時代になっています。

高齢者住宅の需要は今後さらに高まると考えられます。

多くの人は建物を見ている

高齢者住宅を見学すると、多くの人は次のような点を確認します。

・建物が新しいか

・部屋が広いか

・食事がおいしそうか

・設備が整っているか

もちろん大切なポイントです。

しかし私は作業療法士として、別の部分を見ています。

それは「生活が続くかどうか」です。

本当に見るべきは生活動線

例えば見学の際に私が確認するのは次のような点です。

・居室から食堂までの距離

・トイレまでの距離

・夜間の移動動線

・エレベーターの位置

・転倒リスクのある場所

・買い物や通院のしやすさ

高齢になると、数十メートルの移動が大きな負担になることがあります。

建物の豪華さよりも、毎日の生活動線の方が重要な場合は少なくありません。

失敗する人の共通点

現場で感じるのは、多くの人が「限界まで自宅で頑張る」ということです。

転倒する。

骨折する。

入院する。

退院先が見つからない。

慌てて施設を探す。

この流れは珍しくありません。

すると、

「空いているところに入る」

という選択になりやすくなります。

住宅選びではなく、空室探しになってしまうのです。

住み替えの判断を遅らせる本当の原因

住み替えの相談というと、

「歩けなくなったから」

「介護が必要になったから」

と思われがちです。

しかし実際には違います。

私が現場で見る限り、住み替えのきっかけになるのは、

・雪かきができない

・庭の管理ができない

・空き部屋が増える

・2階を使わなくなる

・配偶者を亡くす

といったことが多いのです。

つまり身体機能の低下より先に、

「家を維持する能力」

が低下していきます。

これは住宅改修だけでは解決できません。

住宅改修が向いている家、住み替えが向いている家

住宅改修が向いているのは、

・平屋

・水回りが近い

・介助スペースが確保できる

・家族支援が期待できる

こうした住宅です。

一方で、

・総2階住宅

・狭いトイレ

・急な階段

・独居

・敷地管理が難しい

といった場合は、住み替えを検討した方が合理的なことがあります。

空き家問題とも無関係ではない

総務省の住宅・土地統計調査では、日本の空き家は約900万戸となり過去最多を更新しました。

私はこの数字を見るたびに、

「住み替えの判断が遅れている住宅も少なくないのではないか」

と感じます。

高齢になってから慌てて考えるのではなく、

元気なうちから住まいの将来を考えることが重要です。

まとめ

高齢者住宅選びで失敗する理由は、建物選びに失敗するからではありません。

多くの場合、

「検討を始める時期が遅い」

ことが原因です。

大切なのは、

今住めるかではなく、

5年後、10年後も暮らし続けられるかを考えることです。

住まいは建物ではなく生活の土台です。

だからこそ、高齢者住宅を選ぶ時には設備だけではなく、生活そのものを見る視点が必要なのではないでしょうか。

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