住宅の相談や訪問をしていると、2階の押し入れがほとんど使われていない家を見かけることがあります。
収納が足りないわけではありません。
むしろ十分な広さがあります。
それでも中は空に近い状態です。
なぜでしょうか。

押し入れが使われなくなる理由は収納不足ではない
若い頃は違います。
季節物の出し入れをする。
来客用の布団を収納する。
子どもの学用品を保管する。
2階の押し入れには様々な役割があります。
しかし年齢を重ねるにつれ、少しずつ変化が起きます。
階段の上り下りが面倒になる。
重い物を持って移動したくなくなる。
しゃがんだり立ち上がったりする動作が負担になる。
すると生活に必要な物は、少しずつ1階へ移動していきます。
生活範囲は思っている以上に狭くなる
高齢になると身体機能だけでなく、生活範囲そのものが変化します。
以前は家全体を使っていた人でも、
- 2階へ上がらなくなる
- 使う部屋が限られる
- 必要な物を手の届く範囲に集める
という変化が起きます。
その結果として、2階の押し入れは使われなくなります。
押し入れが空になったのではありません。
暮らし方が変わったのです。
空っぽの押し入れは住宅のサインでもある
住宅を見るとき、私たちは段差や手すりばかりに目が向きがちです。
もちろんそれらも大切です。
しかし本当に暮らしやすい家を考えるためには、「今その家がどのように使われているか」を見る必要があります。
空になった押し入れ。
使われなくなった部屋。
閉め切られた2階。
そうした場所には、その家で起きている生活の変化が表れています。
住まいは変わらない。変わるのは暮らし方
家は建てた時のままです。
押し入れも変わりません。
しかし家族構成や年齢、身体機能は少しずつ変化していきます。
住環境を考えるときに大切なのは、家の性能だけではありません。
今の暮らし方に、その家が合っているか。
この視点を持つことで、住宅の見え方は大きく変わります。
空っぽの押し入れは、単なる収納の問題ではありません。
その家で起きている生活の変化を教えてくれる、一つのサインなのです。

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