段差5cmより怖いものがあります

暮らしの使いにくさ

高齢者や障害のある方の住環境について話をしていると、

「段差は何cmから危険ですか?」

という質問を受けることがあります。

住宅改修では段差の解消が重要であり、住宅メーカーや介護用品の資料でも「○cmの段差」といった表現をよく目にします。

もちろん、段差が高くなれば転倒の危険性は高まります。

しかし、作業療法士として多くの方の生活を見てきた私が感じるのは、本当に怖いのは段差の高さではないということです。

5cmの段差でも転倒する人がいます。

一方で、10cm以上の段差を毎日問題なく越えて生活している人もいます。

その違いは、どこにあるのでしょうか。


段差の高さだけで危険性は決まりません

同じ5cmの段差でも、

「毎日安全に越えている人」と、

「転倒してしまう人」がいます。

これは筋力だけの問題ではありません。

例えば、

  • 段差が見えているか
  • 段差の存在を知っているか
  • 急いでいるか
  • 荷物を持っているか
  • 疲れている時間帯か

こうした条件によって、危険性は大きく変わります。

段差は数字だけで評価できるものではないのです。


家の段差と街の段差はまったく違います

自宅の段差は、毎日見ています。

どこにあるのかも知っています。

身体が自然に覚えています。

しかし、街は違います。

歩道の舗装。

駐車場の縁石。

スーパーの出入口。

バス停。

工事跡。

外の段差は、その日によって状況が変わります。

予想していなかった場所で足を取られることもあります。

だから私は、

家の中よりも、家の外の方が怖い段差は多い

と感じています。


函館では雪がなくなっても安心ではありません

北海道では、冬だけが転倒しやすい季節ではありません。

雪が解けた後には、

舗装が傷み、

歩道に小さな凹凸ができ、

縁石との段差が分かりにくくなる場所があります。

5cmほどの段差でも、

夕方で疲れている。

買い物袋を両手に持っている。

杖を使っている。

こうした状況が重なるだけで転倒につながることがあります。

以前の記事でも書いたように、

雪がなくなったからといって、転倒の危険がなくなるわけではありません。


生活の中では「条件」が重なることで転倒が起こります

転倒は段差だけが原因ではありません。

例えば、

・荷物を持っている

スーパーで買い物をした帰り道。

両手がふさがるだけでバランスは大きく変わります。

・杖を使っている

杖をついている側と反対に段差があるだけで、歩き方は変わります。

・足が上がりにくい

高齢になると、本人が思っている以上に足先が上がらなくなることがあります。

片麻痺のある方では、なおさら注意が必要です。

・急いでいる

バスに間に合いたい。

信号が変わりそう。

こうした焦りは転倒リスクを高めます。

つまり、

危険なのは5cmという数字ではありません。

生活の中で、その5cmにどう出会うかなのです。


私たちが見るべきなのは段差ではなく生活です

病院では、

「歩けます。」

「筋力があります。」

という評価をします。

もちろん大切です。

しかし、自宅へ戻れば、

病院にはない環境があります。

スーパーまで歩く。

荷物を持つ。

坂道を歩く。

冬道を歩く。

家族を迎えに行く。

生活は、毎日条件が変わります。

だから私は、

段差を評価するのではなく、段差のある生活を評価することが大切だと思っています。

住環境とは、住宅設備だけを見るものではありません。

その人が毎日暮らす環境全体を見ることなのです。


「何cmですか」より大切な質問があります

段差は何cmありますか。

ではなくその段差を、

誰が、

いつ、

どんな状況で越えるのでしょうか。

この視点を持つだけで、

住環境の見え方は大きく変わります。

5cmという数字だけでは、本当の危険性は分かりません。

見るべきなのは、

生活そのものです。


チェックリスト

□ 自宅の外にある段差を意識して歩いていますか。

□ 買い物袋を持った状態でも安全に歩けますか。

□ 杖や歩行器を使う場面を想定していますか。

□ 雪解け後の歩道や舗装の傷みを確認していますか。

□ 段差の高さではなく、生活場面全体を考えていますか。


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