災害が起きるたびに、
「すぐに避難してください。」
という言葉を耳にします。
もちろん、その呼びかけは命を守るために必要です。
でも、先日行った避難訓練で、私は改めて思いました。
避難所までの距離だけでは、安全かどうかは分からない。
270m先の避難所まで、8分45秒
先日、事業所で避難訓練を行いました。
避難所までは約270m。
歩行に配慮が必要な利用者さんも一緒です。
最後の利用者さんが避難所へ到着するまでにかかった時間は、8分45秒でした。
数字だけを見ると、
「そんなものでは?」
と思われるかもしれません。
でも、私は時間よりも気になったことがありました。
いつものサンダルで避難できますか
ある利用者さんは、普段からサンダルで通っています。
履き慣れているのでしょう。
本人にとっては歩きやすいのだと思います。
でも、災害は選べません。
そのサンダルのまま、
ガラスが散乱した道路を歩けるでしょうか。
倒れたブロック塀の横を通れるでしょうか。
雨が降っていても。
夜でも。
避難訓練は、「いつもの服装」で行うからこそ、本当の課題が見えてきます。
270mで息が上がるという現実
避難所へ着いた利用者さんの中には、息を切らしている方もいました。
270mです。
マラソンではありません。
健康な人なら、それほど長い距離とは感じないでしょう。
でも、高齢になると。
障害があると。
病気があると。
270mでも身体への負担は大きく変わります。
しかも、避難はそこがゴールではありません。
避難所で生活が始まるのです。
今回は夏でした
今回の訓練は夏に行いました。
道路は乾いていました。
明るい時間でした。
転ぶ心配も少なかったと思います。
では、
これが真冬だったらどうでしょう。
函館の雪道。
圧雪。
アイスバーン。
吹雪。
防寒着。
滑らないように慎重に歩く。
同じ270mでも、
同じ8分45秒では済まないでしょう。
むしろ、その差を想像することこそ、防災だと思います。
「歩ける」ではなく、「避難できる」を考える
作業療法士として、
「歩けます。」
という評価をすることがあります。
でも、避難は病院の廊下を歩くことではありません。
焦る。
荷物を持つ。
人が集まる。
足元が悪い。
天候も分かりません。
つまり、
歩けることと、避難できることは違います。
防災は、一度歩いてみることで変わります
避難所まで何メートルあるのか。
それも大切です。
でも、それ以上に大切なのは、
実際に歩いてみること。
家族と一緒に。
高齢の親と一緒に。
障害のある家族と一緒に。
歩いて初めて、
坂道に気付きます。
段差に気付きます。
疲れる場所に気付きます。
「思っていたより遠い。」
その感覚が、防災の第一歩になるのではないでしょうか。
住環境は、災害の日だけ変わるものではありません
私は住環境について発信しています。
手すり。
段差。
住宅改修。
もちろん大切です。
でも、防災訓練をするたびに思います。
本当の住環境は、家を出たところから始まっている。
避難所までの道。
歩く速度。
履いている靴。
その日の天気。
そのすべてが、その人の住環境です。
だから私は、防災も住環境の一つだと考えています。
チェックリスト
□ 避難するときの靴を決めていますか。
□ 避難所まで実際に歩いたことがありますか。
□ 冬でも同じ時間で避難できると思いますか。
□ 家族の中で一番時間がかかる人を把握していますか。
□ 「距離」ではなく、「避難できる現実」を考えていますか。
関連記事
講演・研修のご依頼
福祉住環境研究所では、防災・住環境・地域で暮らし続けるための環境づくりをテーマに、医療・介護・福祉・行政・住宅関係者向けの講演・研修を行っています。
作業療法士としての臨床経験や障害福祉の現場での実践をもとに、「避難所までの距離」ではなく「避難できる暮らし」を考える視点をお伝えしています。こちらから


コメント