AIが広げる新しい働き方

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片麻痺のある人が事務仕事をするとき、何が障壁になるのでしょうか。

キーボードを両手で操作できないこと。マウス操作に時間がかかること。書類を押さえながら記入することが難しいこと。

こうした問題に対して、これまでは片手用の入力機器を使ったり、作業台や道具を工夫したりすることで対応してきました。

しかし、生成AIの発展によって、これまでとは違う方法で仕事を進められる可能性が生まれています。

札幌でAIの可能性を考えた

先日、札幌で開催された「HBA SOLUTION FORUM 2026」に参加しました。

澤円氏の「AIがある世界であなたはどう働く?」という講演を聞き、会場では株式会社HBAが紹介するAI関連技術にも触れました。

特に興味を持ったのは、自然な日本語で指示を出すことによって、資料の検索、情報の整理、文書作成などを支援する仕組みです。

これを見て、作業療法士として考えたことがあります。

これまで身体機能の制約によって難しいと考えていた仕事も、仕事の進め方を変えることで実現できるのではないか、ということです。

片手で操作することと、仕事を理解することは別

例えば、片麻痺のある人に報告書を作成してもらうとします。

従来の方法では、資料を開き、必要な情報を探し、キーボードで入力し、文章を整え、保存するという工程があります。

片手操作では、それぞれに時間がかかるかもしれません。

しかし、本人が報告書の目的や必要な内容を理解しているなら、AIに作業の一部を任せる方法が考えられます。

「この資料の内容を整理してほしい」

「先月との違いを表にしてほしい」

「報告書として読みやすい文章にしてほしい」

こうした指示によって、作業を進めることができるかもしれません。

もちろん、実際にどこまでできるかは、使用するAIの機能や本人の能力、作業環境によって異なります。

また、AIが作った内容を確認することも欠かせません。

それでも、キーボードを速く操作できないことと、報告書を作成する仕事ができないことは、必ずしも同じではありません。

作業療法士が考える環境調整

作業療法では、本人の身体機能だけでなく、活動の内容や使用する道具、周囲の環境を含めて考えます。

例えば、握力が弱い人に対して、握力を強くする訓練だけを行うわけではありません。

握りやすい道具に変更する。作業台の高さを調整する。動作の順序を変える。

そうした方法によって、活動を実現することも考えます。

生成AIも、こうした環境調整の新しい選択肢として捉えることができます。

これまでは身体の動きを補う道具が中心だった場面でも、今後は認知的な作業や情報処理の一部を補う仕組みを組み合わせられるかもしれません。

ただし、音声入力が使えるからといって、すべての人に適しているわけではありません。

発話のしやすさ、周囲の騒音、操作内容の理解、画面の見やすさなど、考慮することは多くあります。

重要なのは、AIという道具に本人を合わせることではなく、本人の状態や仕事内容に合わせて使い方を検討することです。

AIの使いやすさも評価する必要がある

今回の展示会では、AI製品を開発する企業の担当者と話す機会もありました。

そこで改めて感じたのは、障がいのある人が実際にAIを使うとき、どこに困難が生じるのかを調べる必要があるということです。

例えば、片麻痺のある人がAIを利用して文書を作成する場合、次のような点を確認したいと考えています。

  • 片手での操作にどの程度時間がかかるか
  • 音声入力とキーボード入力では負担がどう変わるか
  • 指示を出してから作業を完了するまでに、どの程度の支援が必要か
  • AIの回答を本人が理解し、確認できるか
  • 作業中の疲労や負担はどう変化するか

単に「使えた」「使えなかった」という評価だけでは、製品の改善には十分ではありません。

どの工程で困難が生じ、何を変更すれば作業を進められるのか。

そこまで検討することに、作業療法士が関わる意義があると考えています。

住環境だけでなく、働く環境にも目を向ける

このブログでは、これまで住宅の段差や手すり、福祉用具、地域での移動などについて取り上げてきました。

共通しているのは、身体機能に制約があっても、その人が望む生活を実現するために何ができるか、という視点です。

働くことも生活の一部です。

自宅の段差を解消することで外出しやすくなるように、仕事の進め方を変えることで、働く機会が広がる可能性があります。

そして、AIによって新しい仕事ができるようになったとしても、最後に大切なのは本人が何をしたいのかということです。

澤円氏の講演では、AIを何のために使うのか、使うことをどう決めるのかという人間の役割について考えさせられました。

障がいのある人が、AIに仕事をさせられるのではなく、自分の目的のためにAIを使う。

そのための環境を整えることも、これからの作業療法の役割の一つになるのではないでしょうか。

今後は、実際の就労支援の現場でAIを活用し、作業遂行にどのような変化が生まれるのかを確かめていきたいと考えています。


福祉住環境研究所では、身体機能と生活環境の関係について、作業療法士の立場から情報発信しています。福祉用具や生活用品、デジタル機器などの使いやすさの評価、講演・研修に関するご相談もお受けしています。

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